晴々 haruharu

今年の目標は「できる限り、健康になる」

「性別限定ライブ」に対する法律上の解釈と、わたしの意見

推しが性別限定ライブの開催の是非に対して、現在ファンに意見を募っていますね。

わたし自身、以前この「女性限定ライブ」に参加したことがあり、通常のライブでたまにある、「大柄な男性の後ろの席になってしまってステージが見えづらい……」等のトラブルがなくて、非常に快適だったのを覚えています。

しかしながら、以前「『○○限定』が『○○以外排除』になってはいけない」という記事でも書いた通り、現在では、性別や年齢、人種、生まれや育ちなど、みずからの努力で容易に変更することができない「ルーツ」の部分の差異で、誰かを優遇したり排除したりするのはダメですよというムーブメントが国際的に広がっています。
特に「よりよい世界を目指すための、全世界的で、ユニバーサル(普遍的)なルール」として、国連主導で「持続可能な開発目標・SDGs*1と呼ばれる目標が作られる等、時代が大きく変わりつつある時期です。

過去の事例も紹介しながら、今回あなたはどう選択する?と考えて頂けたらと思います。

そもそも、「すべての日本国民が、性別で差別されることなく生きていける権利」というのは、実際きちんと守られている実感はあまりないかもしれませんが笑、日本国憲法・第14条で保障されています。

憲法というのは、国家や政府が守るべき法律のことであって、「一個人」や「民間企業」も、もちろん守るべきではある大事なルールですが、その法律の対象が国や政府である以上、憲法を根拠にして、一個人や民間企業が直接的に縛られることはありません
ここはポイントです。覚えておいてください。

公共施設での「性別限定ライブ」


実は以前にも、某女性アイドルグループが「男性限定ライブ」を開催するという出来事が議論になったことがありました。

女性アイドルグループのファンといえば、一般的には男性の方が多いですから、興行演出上の理由で「的が大きいターゲット」に絞るというのは、ある程度合理的な判断ですよね。
逆に、推しのように、的の大きなターゲットをあえて外すことによって、「予定調和的なライブの雰囲気を変えたい」という新たな挑戦を行うことも、興行演出上、大切なのではないでしょうか。


ではなぜ、これが議論になったのかというと……
この男性限定ライブを行う会場が、開催地の公共機関保有の公共施設であったことが、問題視されてしまったんです。


日本国憲法に基づき、同時に施行された地方自治法では、普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取り扱いをしてはならない」と定められています。
この法律を根拠に、「公共施設で行われるライブに女性だけが入れないのは差別では?」と議論になったのです。

そして、もちろん、トランスジェンダー(心と体の性別が一致しない)当事者のみなさんの人権を侵害しているのでは?という議論もありました。



結論を申し上げると、このときの「男性限定ライブ」自体は無事開催されました。

「会場が公共施設であっても、このライブ自体に国・県・市などの公共団体は関わっていない。公共事業ではない」と判断されたためです。
さらにこのとき、女性限定の「ライブ・ビューイング」を合わせて開催することで、女性ファンに対しても一定の公平性を保ったということもプラスになりました。

憲法第14条は、私人*2間での男女完全平等までを強要する規定ではないとされているため、民間企業の行うことであれば、どんな人たちを自分たちのお客様にするかは自分たちで決めても良く、最終的にこういう判断になったと思われます。



そこで、推しが性別限定ライブを開催するにあたり、今回使用される予定の会場である「ぴあアリーナMM」が「公共施設」なのかどうかは、気になる点だと思います。

実は、ぴあアリーナMMは、「ぴあ株式会社」が単独で運営する、純度100%の民営のハコです。
民間企業が単独で保有する1万人規模のハコは、日本でただひとつ。

このぴあアリーナMMのみなのです!

「100%民営のハコ」の意味


前述の議論がなぜ起きたのか。
それは「ライブ会場が公共施設であった」、ここ一点に尽きると思います。

民間企業が行うことであれば、どんな観客を集めたい・どんな人達にサービスを提供したいと自分たちで「狙って」規定することは自由です。
だからこそ「レディースデー」とか「女性専用車両」、「男性限定の個室ビデオ店」などが存在できます。


前回までの年末コンサート会場だった「パシフィコ横浜」(正式名称「横浜国際平和会議場」)の運営も、「株式会社横浜国際平和会議場」という民間企業が行なっています。
しかし、こちらは横浜市が24.4%神奈川県が11.9%の株式を保有しており、純粋に「民営のハコ」とは言い難いのではないでしょうか。*3


その点で言えば、100%民間企業が運営しているぴあアリーナMMでの開催は、「税金が投入されている公共施設である以上、一部の市民を差別する性別限定ライブはダメ!」という議論に巻き込まれずに済む可能性は高いのではないかと思います。

じゃあ大丈夫だね!やろうや!というご意見になったあなた。
最後にわたしの意見を書いておきます。
これらは正しいとか間違いとかでは決してないと思うので、一意見として読んでください。

わたしは「反対」です


え!?なんで!?OKと言える理由をこんなに明記したのに!?と驚かれていることと思います。
実は、わたしの反対理由は、ここまで書いてきたことではないんです。



「コロナ禍」だからです。



男性限定・女性限定としてライブを行う以上、その日のライブの対象ではない性別の方の入場を防ぐために、入場時には身分証などのチェックを受ける必要性があります。
以前の推しの性別限定ライブでは、「性別は戸籍上の性別にて判断」とされており、「氏名と性別が明記された公的身分証明書(各種健康保険証、年金手帳、パスポート、住民票などのいずれか1つ)が必携でした。

通常のライブでも、ファンクラブ会員を限定にしたライブ等では、「会員証の提示がスムーズに行えなかった」「身分証を忘れた」などの理由で滞留が発生することもあるため、これだけを理由にして、性別限定ライブだけを取り立てて反対するわけでは決してありません。
しかしながら、以前の男性限定ライブで、「潜入しようとして係員に阻まれている女性」が、居合わせた多数の男性に目撃されている事実もあり、このような「非対象者」を入場させないようにするためには、入場時に何らかの混乱が発生する可能性は否定できません。

「ファンクラブ会員か否か」という、明確な枠組みが存在するものとは違い、こと「性別」に関しては、「ヒゲが生えているから男性」だとか、「スカートを履いているから女性」などという、単純かつ絶対的な基準が明確に存在するわけではありません。
「戸籍上の性別で入場しようとしただけの方」が、入場列で何らかの不正を疑われてトラブルになるとか、不正行為を働こうとする不届き者だけではなく、何らかの理由で「入場を拒否された方」が納得せず、入場列から動こうとしない等のトラブルが起きた場合、その方に対して受付スタッフさんが密に接触することになったり、入場列に過度の滞留が発生し、来場者同士が密になる危険性があるのではないか?と思うのです。


以上の理由で、コロナ禍の現在、入場をスムーズに行うと言う意味で、入場者を「選別」する必要性のある性別限定ライブを行うのは大丈夫かな、と、わたしは心配に思っています。


あなたは、どう考えますか?
ご意見が伺えたら嬉しいです。

*1:「Sustainable Development Goals」の略

*2:公の立場ではない、「一個人」のこと

*3:余談ですが、パシフィコも民活法(民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法)が適用される全国第1号の施設として建てられました。のちに民間と公共団体が共に出資して運営する事業体=「第三セクター」等にも広がっていく、当時としては画期的な法律でした。